携帯の世界で欧州と新興国は「一衣帯水」という重大な事実
昨日のエントリーに、Tom-Dさんからご質問をいただいたこともあり、またちょうど関連する記事を8月15日号の日経コミュニケーション用に書いたところなので、この記事を補足する内容を書いておく。
2年前に、本を書こうとしてポシャった企画があり、そのために調べたときには、欧州全域をまとめると、米国を上回る市場規模をもつ、世界最大の通信市場だったので、驚いた記憶がある。例によって、携帯やブロードバンドの加入者数では今は中国が世界一だが、一人頭の金額が小さいため、欧州が一番ということだった。
さらに、メーカーという意味では、欧州メーカーは世界では圧倒的に強い。参考に携帯端末の世界シェア(今年第一四半期、ガートナーによる)は:
となっている。モトローラは前年の18%から大幅に落ち込み、それをノキア・サムスン・LGが食っている状態。
昨日掲げたインフラ機器で、今主力なのは携帯電話向けのインフラだが、その市場では欧州方式のGSMが新興国で主力になっている。つまり、欧州メーカーは、地元の強みを生かした欧州方式で、成長盛りの大型新興国にガンガン売っているワケだ。
ノキアの最新四半期財務発表では、ノキアの主要市場トップ10はこんなふうになる。
このうち、アメリカだけは大負けで落ち込みが激しく、イギリスは低成長だが、あとはどんどん伸びている。*1
欧州というのは、域内に「ロシア」*2という「BRICs」の一角を抱え、東欧やスペインなどを含め、「新興市場」を体の中に持っているようなものである。さらに、GSMという世界規格の強みを生かし、南米・アジア・アフリカなどの新興市場も「地続き」感覚なのである。
ノキアはフィンランド、エリクソンはスウェーデンの会社であり、いずれもかつて「植民地」を持った国でもなく、ただ自国マーケットが小さいので、一生懸命国際戦略をやってきた会社。*3それが、GSMで勝ったおかげで、新興国を「一衣帯水」の状態にすることができた。
これから、新興国はますます伸び、ノキアやエリクソンの物量はますます大きくなる。ニッチ・プレイヤーに対して、ますますコストの差が大きくなるし、研究開発も全方位でできる。
iPhoneに対して、日本のマスコミは「日本市場へのインパクト」などといって、相変わらずコップの中の嵐の話を騒ぎたてているが、世界で見ると、欧州と新興国の「一衣帯水」連合の勢力がこれからますます強くなる、という点は割りと見逃されているように思う。
では、ノキアとiPhoneの関係は・・・という点については、来月の日経コミュニケーションを読んでね。^^