「ビジョンセラピーは儲かる」でもいいんじゃないか

私の学習障害についてのエントリー(「視覚発達障害」「聴覚発達障害」のカテゴリー参照)を見てくださった日本のお母さんから、メールをいただいた。その方は、お子さんがディスレクシアだそうで、学習障害に関するブログを運営されており、日本でビジョンセラピーを提供しているクリニックのリストも掲載されている。とても参考になるので、下記を参照してほしい。

学習障害児(ディスレクシア)の支援のために - 楽天ブログ

日本でビジョンセラピーが受けられるのは、下記の場所だそうだ。

  大阪医科大学LDセンター
  Joy Vision
  特別視機能研究所
  かわばた眼科

さて、我が家の子供たちは二人ともビジョンセラピーのお世話になったわけだが、これがえらく値段が高くて苦労した。20回のセラピーに途中と最後と終了後半年の3回の診断を合わせて4000ドル以上(40万円)。次男坊のときは、さらに聴覚のセラピーでまた1200ドルの出費もあった。しかし、ちょうどその前後に私は本を書き始め、そのために通常の仕事を他にアウトソースするなどして収入が減ったこともあり、借金などでやりくりし、スケジュール的に無理な仕事を敢えて受け、吐きそうになるまで働いている。

一方、このグロワーズさんのブログには、ビジョンセラピーを提供されている方から「アメリカでは高いそうですが、日本ではまだ普及していないこともあり、お安く提供しています」というコメントがはいっていた。それは親からしたら涙が出るほどありがたいことなのだが、一方で「ちょっと待って・・・」とも思う。

ウチの子供たちが通ったビジョンセラピーのクリニックには、3人のお医者さんと5人ぐらいのセラピストがいる。アシスタントも含めて、全員女性である。特にお医者さんがたを見ていて、つくづく思う。もし私が、今大学にはいるぐらいの年だったら、ビジョンセラピー専門の眼科医になったらいいだろうなぁー・・・

お医者さんもセラピストも、子供をもつお母さんばかり。だから、子供の扱いも慣れているし、親の大変さもよくわかる。外科などと違って、命にかかわらないので医療過誤訴訟のリスクも少ないし、ストレスも少ない。完全アポイント制、急患もないので、ライフワークバランスの点ではバツグンである。一方、専門性が高く、アメリカでもまだ数が多くないので、需要は高く、競争もそれほどではない。ある程度高い値段をチャージして、安定した収入を得ることができ、本当に人助けになって感謝される。優秀な女性にとって、こんないい仕事はないと思う。

日本では、まだまだビジョンセラピーのクリニックが少ない。上記のブログでも、全国でたったの4ヶ所しかリストされていない。この数を増やすには、まず私などもがんばってブログに書いたりして、ビジョンセラピーが助けになると、なるべく多くの人に気づいてもらうことも必要だろう。その一方、優秀な専門医を増やし、彼らにがんばって周知活動をしてもらう必要がある。だから、多少高い値段をチャージしてもいい、とにかくどんどん優秀な人に専門医になってもらい、ノウハウの蓄積が多いアメリカにも来てがんがん勉強してもらい、お客を増やすべく、どんどん営業してもらう。

そうやって参入する人が増えて、多すぎるようになれば、値段の競争も起こるだろうが、それまでは、ある程度「市場価格」の値段を堂々とチャージしてもらってもいいんじゃないかと思う。高い値段が払えないご家庭に対して、分割払いやなんらかの公的援助などができるような配慮も必要になるだろうが、基本的に、この新しい分野でどんどん勉強して研究して推進して、周知して分野を確立できるだけの、お金がまわるようにしてあげたいと思う。

セラピーをやるほうも、最初に高いお金を払うと、無駄にしてはいかん、とがんばってやる。半年間、毎日家庭セラピーを毎日やらせるのは、親も子も大変だ。途中でくじけてしまった人も知っている。我が家では、こんだけ必死になってお金を払ったんだから、無駄になっては大変・・・というセコい考えで、私は必死になって子供たちにやらせた。

両方の意味で、「市場原理」を無視しないほうがいいんじゃないかと思う。アメリカ的な考え方だと批判は覚悟の上だ。でも、たとえお金で苦労していても、私は的確な指導をしてくれる、優秀なお医者さんを信頼していたし、そういうクリニックが毎週通える近所にあったことに、深く深く感謝している。そういう環境を作り出すには、「ビジョンセラピーは儲かる」で大いに結構じゃないかと思う。優秀な女性医師候補が、「美容整形よりビジョンセラピーのほうが儲かるから、そっちを専門にしよう」という世界をまず作るべきじゃないかと思う。

ちなみに、今日は次男坊Tの学校で、「IEP」(Individualized Education Planning、問題のある子供の対策を専門家を交えて話し合うミーティング)があって行ってきた。(下記エントリーで「対策会議」といっているもの)

豊かな時代の教育とは:「こいつらにはやっぱかなわねー」と思うこと - Tech Mom from Silicon Valley

2月にやったオーディオ・セラピーと、最近終ったビジョンセラピーの様子を報告したのだが、いつものように、スピーチセラピストの専門の先生が、彼のオーディオ・セラピーの前にやった診断を見て、すぐに反応。「静かな状態なら、両耳ともほぼ100%聞き取り理解できるのに、雑音がはいると右が80%、左が60%にまで落ちるのね。60%はひどい。これは、確かに雑音が苦手で大変だ。教室で、アンプの補助をつけてやってください。」と即座にアドバイス。1年生の教室には今はないけれど、秋に2年になると、2年生の教室には、アンプ(先生がマイクを使って話し、その子供の手元でスピーカーをつけて聞き取れるようにする)の設備があるので、それを使おうということになった。また、当面1年生の間、担任の先生は、「今の席だと、私が彼の左側にいるような位置になる。右側から私の声が聞こえる場所に替えよう」と決定。

そして、いろいろと彼の教室内の問題行動がいつ起こるか、何が効果があるか、などを話し合った。一番問題なのが「書く」課題を与えられて、自分でやらなければならない場合だ、ということに絞り込めたので、その科目だけ、学校内にある「ラーニング・センター」という一種の「特殊学級」に行くことになった。一般クラスにはいらず、特殊学級にずっといる子もいるが、苦手な科目だけをそこで個別指導を受けることもできるので、我が家の長男Sも、「書く」ことはそこでお世話になっている。ここの先生も、とてもよい先生だ。

こういう対応はアメリカでは普通なんだろうと思っていたけれど(上記エントリー参照)、どうもそうではないらしい、と最近思うようになってきた。隣の学区ではIEPの対象児童が一人もいないとか(ありえねー!)、IEPをリクエストしてもなかなか開いてもらえないとか、他の学区の話を聞くと、どうも大変そうだ。わが学区は、学習障害対策が特にしっかりしていると近所で有名らしく、そのおかげか、ここ数年、州統一テストの学校平均スコアがすごく上がっていて、そのために引っ越してくる人が増えているらしい。それでますます、予算が足りなくなって困っている。(それで、またどっさり寄付だよー・・・でも、我が家なんてしっかり恩恵にあずかっているので、仕方ないのだ・・・)ヤレヤレ、だけれど、どうもそういうことらしい。