iPhoneハイプと「裸の王様」

はっきり書いていないけれど、このブログでも、私はiPhoneに対して割と冷ややかだった。アメリカの業界でも、パソコン系・ギークメディア系の人たちがハイプしている割に、携帯電話系の人たちは冷ややかな態度を保っていた。電話としてみると、評価が低くなってしまう点が多い。ただ、列ができたりして、初速滑り出しがよかったので、私も含めて懐疑派はしばらく沈黙して様子見、になっていたけれど。

昨日のiPhone値下げの話を聞くと、やっぱり、キャリア1社であの数字は無理、ということだったんだろうと思う。AT&Tの新規加入者ペースと、過去の米国と欧州でのスマートフォン販売ペースや比率などを総合すると、いかにiPhone効果で爆発的に売れても、来年末までに1000万台ってのは苦しい。秋〜冬の販売シーズンに向けて、もういっちょ加速してやらないと・・・ということなのだと思うが、値下げしても、米国でAT&T1社のままではやはり無理じゃないかと私は思っている。(欧州でも売る予定だが、そもそもアメリカより市場が小さく、また発売時期が早くて来年だろうから貢献度はそれほどないと思う。)しかも、アップルストアよりもはるかに数多くの販売店を全米にもつAT&T自身が、どうもやる気がない。*1

キャリア様の逆鱗に触れたiPhone? - Tech Mom from Silicon Valley

iPhoneのインターフェースは好きなので、電話機能がなくて安いのが出たら欲しい・・と思っていたら、ちょうどiPod Touchが出たので、そのうち買おうかと思っている。でも、まだメモリー容量が少なすぎるので、次のモデルまで待とうか、どうしようか・・・とちょっと迷い。今のビデオiPodでも、30Gbのうち20Gbぐらいは使っているので、全然足りない。(子供を車の中やレストランで黙らせるために、「パイレーツ・オブ・カリビアン」とか「Mythbusters」とか「スターウォーズ」アニメ版とかの映像ソフトをいっぱい入れているので、すぐいっぱいになる)

あのタッチスクリーンのキーボードは使いにくそうだから、メールは今のBlackberryでいい。電話も今のでいい。

タッチスクリーン原始時代回想録とiPhone - Tech Mom from Silicon Valley

複合端末、という性格そのものについても懐疑的だったわけだが、この点についてiPhoneユーザーの皆さんがどう評価しているのか、まだいまひとつわからない。

Converged Devices その1:iPodは携帯電話と融合するか - Tech Mom from Silicon Valley

だけどとにかく、iPhoneのハイプのおかげでスマートフォンというセクターが、マイナーからメジャーに昇格した。AT&T以外のキャリアはホクホクしてるんじゃないかと思う。iPhoneに引っ張られて、ホンネとしてはもっと売りたいBlackberryなどのスマートフォンが、このクリスマス商戦では爆発的に売れたりするんじゃないかな。

周りがハイプしていると、ネガティブなことを感じても「きっと自分だけなんだろー、自分の感じ方が間違っているのだろー」と思ってしまう。私もずっとそうだったし、多分メディアもそんな感じがあるのではないかと思う。*2値下げを機に、iPhoneの「ホンネ話」がぼちぼち出て来るのかな、と思っている。

繰り返すが、私はべつにiPhone(というかiPhone的なiPod)が嫌いなのではない。あのインターフェースは好きだし、容量や電力消費の問題が解決されたら是非欲しい。ただ、これまで「裸の王様」的に、ハイプに隠れてみんな言わなかった本音や実態が、そろそろ見えてきて、ようやく実力値が見えるようになるかな、と思っている。

*1:米国の携帯電話販売ルートとしては、キャリアの直営販売店が最大のシェアを持っている。つまり、キャリア販売店のやる気がないと、ダメージが大きいはずなのだ。

*2:ちなみに、前回エントリーの「携帯ネット世代」の話も、そういう文脈で書いた。