アメリカ人の育て方3.1 - 女神復活

「親に甘〜いアメリカ」の話について、多くの方に読んでいただき、コメントやトラバでいろいろご意見もいただき、ありがとうございました。

で、この話について、少々補足したい。

このあたりを誤解されている方はおられないようなので補足の必要もないのだが、私は日本で、ピーナッツバター・アンド・ジェリー・サンドイッチのお弁当をOKにしろとか、電車をなくして車社会にしろとか、言っているわけではない。そんなことはできるはずがないし、しない方がよい。

とりあえず現実を語ってみたワケだが、そのココロは、「ファストフードは悪。終わり。」「女性の高学歴化が少子化の原因(=で、生まない女が悪)。終わり。」「対策は保育園増設(=で、そこに子供を収容隔離せよ。自分たちは赤ん坊のうんちに触りたくない。)終わり。」というふうに、思考停止してほしくないな〜、ということだ。特に、マスコミが。

これは、ITとかネットとかの変化に対する姿勢と同じ、と言えるかも知れない。

女性の高学歴化や少子化などは、広い意味で、社会がパラダイムシフトした結果の現象といえる。昔は、あらゆる社会規範で女性を低い地位に押し込め、実はかなりつらい仕事である出産・育児の役割にしばりつけることができていたが、技術と社会の発達のおかげで、その社会規範がすっかり変わった。それはほんのここ数十年のことで、また日本だけの話ではない。「ダ・ヴィンチ・コード」の映画を見たので、2年ほど前に読んだ原作を読み返しているのだが、ここではカトリック教会が中世以来、それまでの女神崇拝文化を破壊して魔女狩りを行い、女性を低い地位に貶めたという話が出てくる。(それが事実かどうかは別として、カトリックのシステムが男尊女卑を奨励していたフシがある、というのはあたっていると思う。)いずこも同じなのだ。そしてようやく今、女神が復活した時代がやってきた。

女である私にとって、この変化は大歓迎で、家電や情報通信技術、ファストフード屋やコンビニの発達には常々、感謝している。医療が発達して、子供をとりあえず生めば、だいたいはちゃんと育つ世の中に、感謝している。高学歴化、大いに結構。子供をやたらたくさん産まなくてもよいのも、大いにありがたい。

で、こうした状況の変化を前向きに受け止め、生まない女性や高学歴化を非難したり、また子供が最近ヘンだとかその原因はなんだとかじゃぁ子供に農業実習をさせろとかワケのわからないことを騒ぐばかり、というのをそろそろやめたら、と思う。子育て中の女性だって自由な時間がほしいとか、子供はマクドナルドを食べたがるとか、そういうことを「昔はそうじゃなかった」と言ったって、仕方ない。女性でも自由な時間の味を知ってしまい、子供もマクドナルドの味を知ってしまった今の状況で、禁止するのもムリがある。こういう欲求をそれなりに満たしながら、弊害があるとしたらそれを回避するには何をすべきか、と考えたほうが、前向きじゃないかと思う。

インターネットと言えば「弊害」ばかり書き立てて、昔はよかったと言い募る日本のマスコミと、悪いところも含んだ巨大な混沌をそのまま受け止め、前向きにいいところを広げていこうとするシリコンバレーの空気との違い、というのと、似たようなところがあるように思う。

そういう考え方をするところが、アメリカ人のいいところだ、と思う。

まずは、かわいい子供を見たら、ニッコリ笑いかけてみよう。子供と荷物を抱えて悪戦苦闘する人がいたら、網棚に荷物を載せるのをちょっと手伝ってみよう。歩きタバコのサラリーマンやマスコミや政治家の皆さん、そして昔自分は苦労したのに比べて今の母親は甘いと思っているおかあさんたちも、まずそれをやってみよう。もうちょっと何か、違う発想が出てくるのじゃないかと思う。