初めての本格的なFacility Based MVNO、ディズニー・モバイルの登場

ついさっき終わったばかりのキーノートで、英語でいうまさに、「steal the show」となったのが、サプライズ登場のディズニー・モバイルだ。

以前から、ディズニーがMVNOをやるという話は発表されていたが、その具体的なサービス内容が今日この場で発表された。ディズニーの名前は、展示会のガイドにも載っていない、全くのサプライズ。最初にアイガーCEOがビデオで登場。それから、幹部の一人が登場して、ディズニー・モバイルの発表が始まった。

おかあさんとティーンぐらの子供が出てくるところはまぁ普通、それからミッキーマウスが出てきたのもまあ想定の範囲内だが、それから暗くなった舞台の真ん中が二つに割れて、人の背よりも大きい携帯電話のモックアップが煙の中を登場、そしてなんと舞台の前では花火があがった!さすがに、会場は驚きの声と拍手の嵐。

まぁそういう舞台装置もさることながら、サービスの内容に、はっきりいって私は、ディズニーを見直した。どうせ、ミッキーの壁紙や映画のクリップがダウンロードできるような代物だろうと思っていたら、もちろんそういうこともできるのだが、ちょっと違うのだ。

売り物は、「ファミリー」。携帯電話が低年齢層に浸透するにつれ、いろいろな点で親にとって頭の痛い問題が多いワケだが、このサービスは、こうした親の悩みに応え、子供達の利用を、親が監視したり制限したりする機能が満載されている。

  • 利用料の制限:家族全員に無料通話時間を割り振ることができる。音声だけでなく、メッセージの許容量なども含まれる。で、子供の電話で所定の容量を超えると、本人だけでなく親の電話にもアラートが出る。
  • 使用時間の制限:授業中に電話が使えないように、子供の利用時間を親が設定可能。その時間帯内でも、緊急相手先として指定した番号、例えば親の電話番号や911(警察・消防)には発信できる。
  • 通話相手の制限:子供が電話の受発信をしてほしくない相手を親がブラックリストできる。
  • 居場所確認:GPSロケーター。ウェブだけでなく、端末で地図が見られる。
  • アラート:家族内でのメッセージが発信されると、受けた方がこれに返答しない限り、次の電話やメッセージができない、つまり親のメッセージを子供が無視できない。

などなど。子供にとってはあまりありがたくない機能が満載なのだが、結局お金を払うのは親なので、逆に言うと、これで親を安心させて、teenやtweenに電話を持たせようという戦略だ。これらの制御は、すべて親の携帯電話端末からできる。

私がMVNO(当時はこの用語がなく、リセラーとよばれていた)相手にホールセール・ミニッツを売っていた90年代半ばでは、到底こういうサービスは考えられなかった。また、これまでのヴァージンやESPNなどのMVNOでも、ここまでの自由度はなかった。付加機能でなく、通話や課金の中味までユーザーが制御できるサービスは見たことがない。これができるためには、双方向のデータ機能と、交換機+課金機能のかなり中の部分までをMVNO側が保有して作り込まなければならない。「ほぉ、スプリントは、ここまでアンバンドルしたの!」というのが、私の驚きだった。

ようやく本気でキャリアのサービスと差別化できる、本格派MVNOが登場したというワケだ。これから、どんどんこういうアイディアのMVNOが出てきてほしいものだ。特に、このアイディアはエンタープライズでも使える。誰か、やってくれないかな。