ネット映像配信のビジネスモデルが、ついに出現しつつある、のかなぁ〜

テック系ポッドキャスト「Inside the Web」で、先週はYouTubeの創業者兼CTO、Steve Chenのインタビューがあった。この番組のインタビューは毎回なかなか面白く、また数少ない女性のテック専門キャスターでもあるので、ひそかに応援しているのだが、今回はまた格別面白かった。

YouTubeは、ご存知、無料映像配信サイトである。Flickrの動画版とよく称される。少し前に、有名なコメディ番組「Saturday Night Live (SNL)」の違法クリップがYouTubeで流され、SNLを作っているNBCが抗議したという件で、ますます有名になってしまった。

で、お決まりのナップスター状態全面戦争になるかと思いきや、そうでもない。さすがに、人間は学習する。このインタビューでは、YouTubeが、いかにテレビ局や著作権協会と協力してやっているか、そのためにどんな技術的なしかけを作っているか、ということを、例のあっけらかんとしたシリコンバレーギーク口調で語っていた。

面白いと思ったのは、この事件のおかげで、若年層には忘れられていた「SNL」が、再びヒップな番組としてのイメージを回復し、視聴率があがった、という話である。そのため、MTVなどの若年層向けテレビ局が、「テレビを離れてしまった視聴者を取り戻すために、YouTubeに宣伝用クリップなどを提供し始めている」という。

第一次ネット・バブルの頃は、eコマース・サイトの宣伝をテレビで流すのが常套手段だったが、逆のことが起こってきている、ということだ。

といっても、「すわ、テレビはいよいよネットに負ける!」というのは早計。いかに日の出の勢いの有名サイトといっても、You Tubeは従業員22人のベンチャー企業。この人数で死ぬほど働いているからなんとか会社として存続しているのであって、大テレビ局とタメをはれるというのとはレベルがまだまだ違う。

一方、もう一つ私の愛用ポッドキャスト「This Week In Tech (TWiT)」でも、面白い数字を聞いた。NBCなどの大手ネットワークが、iTunes Music Storeで番組を有料配信し始めてから数ヶ月経つが、このビジネスでNBCが手にするマージンは、一本あたり$1.50にもなるという。これに対し、通常の広告モデルで、視聴者一人当たり、番組一本あたりのマージンは、わずか$0.01(1セント)。この数字比較では、iTMSの料金回収のためのコストはアップル側のコストになるだろうから、すでに差し引かれていると想定すると、NBC側の変動費はごくわずか(iTMSとの間のお金のやりとりコストなど)で、これはものすごく割のいい商売ということになる。「だから、ネットワーク局は、最近ネット配信を熱心にやりだした」のだそうだ。

リーチする数からいえば、これもYouTubeと同じ話で、テレビの視聴者数とは比較にならない小ささだし、今のところはiTMSで配信する番組は、最も人気のある番組ばかりで数も少ないからいいが、どんどん増えたら同じようにはいかないだろう。とはいえ、広告収入の減少に悩むテレビ局にとっては、これまで嫌ってばかりいたネットも、「意外と儲かるじゃん」ということのようだ。

以前の記事でも書いたと思うが、これって日本のiモードと似たようなビジネスモデルであり、アメリカでは、ブロードバンド+iPodが、iモードと似たようなニッチを席巻しつつある、と私は見ている。Middle Tail(Long Tailと従来型の中間)型の、新しいビジネスモデルが、そろそろ出てくる気配かも。

さて、しかしGoogleはどーして、まだYouTubeに手を出していないのだろう?もう人気が出すぎて、値段が高いのだろうか?とはいえ、YouTubeの創業者は二人ともPayPal出身だそうだから、EBayがインターセプト、という可能性もあるなぁ。You TubeのバックエンドにPayPalをくっつけて、有料配信部門もやったら、よさそうな気もする。だいたい、なんでPayPalという、アメリカでは最も普及しているマイクロペイメント方式を、コンテンツ配信に使ってないのか、前から不思議に思っている。誰かが、もうすぐやりだすに違いない。