FacebookとTwitterが勝ち組になると思う理由 - 不況と熟成期

アメリカのソーシャル・ネットワークSNS)はFriendstar→MySpaceFacebookと流行が移り変わってきた。そんな中で、Facebookは「最終目的地(Final Destination)」になるか、という記事が最近目に留まり、これに対する意見を英語ブログに書いた。「Final Destination」という映画と、ウェブ系サービスを表現するのに、「tool/enebler」などと区別して、そのサイトに人を集めるタイプのものを「destination」と言うのの両方をかけている。日本語で言えば「勝ち組になるか」と言っていいだろう。

06年はYouTubeの年、07年はFacebookの年、08はTwitterの年だったわけだが、今年は未だに「何の年」と言えるほどの大型ベンチャーがないねぇ、ということを別の記事に書いて、ある方にTwitterでつぶやき返していただいたりしたわけだが、それは必ずしも「悪い」ことではない、と最近つくづく思う。

煽る話題がないメディアや、新規大型ベンチャーを探す投資家にとっては残念なことだとは思うが、今のように「マネッコベンチャー」が出ようにも出られない経済状況だと、リーマンショックの前までにある程度の資金を調達したり、ユーザー数を積み上げてクリティカル・マスに達した勝ち組にとっては、「過当競争」を気にせず、じっくり投資できる好機とも言える。競争で宣伝費を使う必要がないし、他の企業を買収するにもいいお値段で買うことができるし、人の採用も買い手市場でよい人材を獲得できる。

前回のバブル激戦に生き残ったアマゾンは、「なんたら・コム」とかの有象無象のeコマースサイト群が消滅したあと、スーパーボウルで派手に宣伝するよりも、ロジスティックスの充実、店舗・品揃えの拡張、基本技術の洗練、そして「クラウド」への展開などをしっかり進めてきたおかげで、現在この分野でドミナントな存在となったわけだ。グーグルはバブル後、あまたの「検索サービス」が消滅しつつある間、水面下で基本技術をじっくりと構築し、景気の回復した変化点であった2005年に上場して大企業としての地歩を確立した。アップルがビデオiPodを発売してビデオ配信を開始したのも2005年で、不況の間にその準備を着々とやってきたわけだ。日本で楽天が今に至る地位を築いたのも、上場直後に日本版バブル崩壊で、競争相手が淘汰されたことが作用していると思う。

つまり、不況というのはベンチャーにとって「熟成期」でもあるわけだ。

シリコンバレーアメリカのベンチャー業界でも、一本調子でいつも多くのベンチャーが出てくるのではなく、必然的にこのような景気循環があり、「悪いとき」というのは、ある程度の規模までなったベンチャーが、きちんとした大企業として定着するための「よい機会」でもあると思う。

その意味で、不況前にクリティカル・マスを獲得したFacebookは、次のグーグルになれる立場にあるわけだ。一時は、Ningなど、新手のSNSが出現したが、昨年秋以降、全く静かになった。Twitterはまだクリティカル・マスとまで言えないが、Facebook顧客層とは少々違う層と使い方で、別の地歩を築ける立場になりつつある。

こういった考えを背景に、日経コミュニケーション9/15日号のコラムでは、グーグル対アップルの「クラウド通信」をめぐる戦いの話を書いている。記事ではややコンセプト的には盛りだくさんで、少ない字数ではわかりにくいかもしれないので、ここに補足のつもりで書いた。

ちなみに、同じ号では「米国の通信政策の歴史」も書いていて、オバマ登場による「変化点」にあり、日本でもひょっとしたら政権交代があるかもしれない現在、通信業界の方には是非読んでいただきたいと思う。

で、この話にはまだ次があるが、それはまた別のエントリーで書くことにする。

<参考>
ソーシャルグラフに関するレポートがアップされました - Tech Mom from Silicon Valley