ADDを「瞑想」で治すトレーニング、というワケか!

先日のエントリーで、我が家の息子が「感覚処理障害」の診断を受けたことを書いた。何十ページにもわたるテスト結果の分析をよく読むと、彼の脳の働きで弱い部分というのはわかるのだが、これは果たして「ADD」なのか、「感覚処理障害(Sensory Processing Disorder、以下SPDと略す)」なのか、「アスペルガー」なのか、判然としない。分析結果では、あえてどの名称も付けていない。脳波テストの部分ではアスペルガー傾向があるとされ、機能分析の部分では、明らかに聴覚処理に問題があるということはわかるのだが、全部少しずつ当たっているのかもしれない。どれも脳の働きの問題なので、根っこのところでは結局同じで、人によりいろいろと現象が混じって現れるということなのかもしれない。非常に興味深い。

さて、それで早速今日から、EEGレーニングとよばれるセラピーが始まった。(もう一つの、特別に処方したCDを聴く「聴覚トレーニング」はすでに開始済み。) EEG(electroencephalogram)というのは、どうやら頭に電極をつけて脳波をはかることを指すらしい。今日見ていると、子供たちは、脳波を測るときの電極をつけて、パソコンの前に座る。パソコンにはアニメ映画が流れている。脳波の範囲を指定しておき、その範囲を超えて脳波が高くなったり低くなったりすると、アニメが止まる。止まると、子供は自分でリラックスして気持ちを集中するように意識する。脳波が範囲内に戻ると、またアニメが動き出す。今日見た様子と、パンフレットに書かれている説明を読むと、どうやらそういう仕組みらしい。

そういう話を聞いて、これってもしかして、「瞑想」と同じ理屈なのでは??と思って少しナットクした。坐禅やヨガで瞑想をするときは、これを自分の意識の中だけで行い、実際に「脳の活動」がどのぐらいなのか見えない。EEGレーニングでは、これを「脳波」で測り、映画が止まるという現象で「可視化」して、それを受けて自分で意識的に脳の活動をコントロールする仕方を訓練する、ということじゃないかと思ったわけだ。

ただでさえ子供に坐禅など無理、ADDの子供じゃますます到底無理なワケだが、脳波測定による可視化と映画という「ごほうび」を組み合わせて、自力で脳の活動をある程度コントロールするやり方を訓練しよう、ということか。なるほどー、面白い。子供のほうは、映画が見られるのと、帰りに近くのハンバーガー屋でおやつを食べられるので、クリニックに来るのは楽しみらしい。

処方によると、これだけではないかもしれないが、この種のセラピーを100時間ぐらいやらないといけないらしく、週3回通っても2年近くかかる計算になる。さて、うまくいきますかどうか。

「sensory processing disorder」(感覚処理障害?)のお話

最近、我家の「学習障害発達障害」関連のアップデートをしていなかったが、アフィリエートで売れる本などを見ていると、この問題に興味のある読者がけっこう多いと思われるので、最近の新しい進展について記録しておきたい。

我家の二人の息子はそれぞれに問題を抱えていたが、現在8年生(中学2年)の長男Sは数年前にビジョン・セラピーを行って劇的によくなり、今も整理整頓ができないとか、少々の「ディスグラフィア」的傾向があるとか、完全ではないが、一般的な「苦手」レベルにまで収まるようになっている。(ビジョン・セラピーについては、「視覚発達障害」のカテゴリーを参照のこと。「ディスグラフィア」はこちらのエントリー参照。)

おかげさまで、先月あった「IEP」*1ミーティングにおいて、「Sはもう個別支援の必要なし」とされ、対象から外された。(特別支援はお金がかかるので、「必要」な人にしか認められない。必要がなくなったらサッサと追い出される。)

さて、今度は4年生の次男Tである。一対一なら大丈夫なのに、大人数のクラスでは、全く言われた課題をこなせず、ガタガタしたりボーっとしたり、とにかくまるで機能しない。以前はもっとひどくて、部屋の隅や机の下に隠れて指をしゃぶって動かないとか、耳をふさいで床にごろごろ転がるとか、異常行動が多かった。これまた数年前に「ハイパーアキューシズ」(聴覚過敏)のセラピー(これについては「聴覚発達障害」のカテゴリー参照のこと。)を受けて、それほどひどい異常行動はなくなったが、それでも相変わらず教室で機能しない状態が続いている。IEPの特別支援や周囲の理解のおかげで、行動的にはほとんど問題なくなっているが、教室でまったく何も学べない状態のため、学年が上がって勉強内容のレベルが上がるにつれて成績はどんどん悪くなっている。

アスペルガーではないかと検査を受けたところ、ボーダーラインの「広汎性発達障害」と診断されたが、学校の特別支援の先生からは「sensory processing disorder(感覚処理障害、とでも訳すのだろうか、日本での正式名称は知らない、長いのでSPDと省略する)」ではないか、とかねてから言われており、その本も貸してもらって読んだ。当たるとも遠からず・・・という感じであったが、ではどう対策するか、という話になると、「accommodation(問題をなるべく小さくするために周囲が調整してあげること)」しかなく、この問題そのものを治す「セラピー」については、この本では言及されていなかった。

上記の「ハイパーアキューシズ」とは、特定の周波数に異常に敏感で、その周波数の音が体に不快感を与える現象(例えば黒板をクギでギーっとひっかく音を聞くと多くの人は不快に感じて「ぎゃぁ!」と耳をふさぐが、彼にとっては多くの人がざわざわと騒いでいる音などが同じような不快さで耳にはいってくる)。これに対して脳が自衛のために、外からはいってくる音の刺激を自発的にシャットアウトしてしまう。Tの場合も、ざわざわした教室では、脳が自衛のためにシャットダウンした状態になっている、と思われる。

SPDでは、聴覚だけでなく、触覚や嗅覚なども含めたあらゆる外界からの刺激に対して異常に敏感で、そのために受容した感覚を脳で処理する機能に問題が生じる。つまり、「ハイパーアキューシズ」はSPDの一部に含まれる。「異常に敏感」またはシャットダウン中の「異常に鈍感」という状態が両方ともあるとか、体を動かすことの快感が強いために「ガタガタする(英語でいうfidgety)」「やたらに踊る」とか、ADDと似た行動もある。(いろんな話があるので、もしこの疑いのあるお子さんをお持ちの場合、私のこの記事だけでなく、必ず他の文献も参考にしてください。英語ウィキペディア記事はこちら。)

以前のハイパーアキューシズのセラピーを受けた先生でも、こうした脳の反応の問題について説明を受けたが、彼女のところはきちんとした設備もなく、SPDの検査を受けても、学校に「こういう対応をしてください」という手紙を書くしかできなかったので、そこまでやらなかった。ところが、地元の子育て無料情報誌の広告で、「SPD」の診断とセラピーをやっているクリニックが、以前は遠方にしかオフィスがなかったのだが、最近我家の近所にもオフィスを開設したことを知り、さっそく相談してみた。

検査では、いろいろな刺激下で、脳のどの部位がどれだけ反応しているかしていないか、ということを詳細に調べる。前回のハイパーアキューシズ検査と同じことも再度実施。その結果、まず「ハイパーアキューシズ」は完全には治っておらず、相変わらずいくつか特定の周波数帯に異常に敏感であること、特に左の耳では、雑音がある場合の聞き取り能力が極端に低下することがわかった。(前回のときのエントリーに「数年後に効果がなくなる」というケースのコメントをいただいたが、それがまさに起こっているということのようだ。)また、脳波に関しては、「アイドリング」状態の脳の活動が通常より大幅に低いことがわかった。自然に脳が起きる状態、つまり自分が好きなことをやっているときはいいのだが、好きでないことをやるのが大変困難で、「スリープモード」から起こすのに普通の子よりも大幅にエネルギーが必要になり、「ぼーっとして何も聞いていない状態」が普通の子よりも大幅に多い、ということになる。さらに、脳の部位ごとの検査では、「アスペルガー」の傾向が認められ、また感覚の処理を司る部分の活動も弱いことがわかった。

対策は、二つに分けられる。まず、ハイパーアキューシズは、前回やったものと原則的には同じことをやるが、今回はもっと細かくTに合わせた処方をし、期間は前回の「10日」ではなく「90日」にわたって行う。このため、毎回クリニックに連れてこなくてもいいように、Tに合わせて処方した音楽をCDに録音したものを、ヘッドホンで自宅で一日2回、30分ずつ聴く。2週間ごとに検査(オーディオグラム)を行い、それに合わせてまた新しい処方のCDが出される。最初の部分をちょっと聴いてみたところ、クラシック音楽だが、右左に音が行ったり来たりする。過敏な周波数もカットしてある。これは前回の経験もあり、ある程度の効果は前回もあったし、ある程度私も理解しているので、早速始めた。今回は、日にちは長くかかるが、音楽を聴いている間、会話さえしなければ、本を読んだり宿題をやったりしてもいい、ということで、生活ペースをそれほど変えなくてよい。

もう一つは、脳の活動状況の対策で、こちらはもっと時間も手間も費用も(泣)かかりそうで、まだ検討中。週3回クリニックに通い、コンピューターゲームのように仕立てたセラピーを行う。特定部位の脳を働かせるように処方されているそうだ。少なくとも、ここまでの診断結果を見ると、これで彼の問題にすべてぴったり合致しており、問題はまさにこれ、と思われるが、このセラピーが本当に効果があるのかどうか、もう少し事例を調べてみてから、決めようと思っている。学校の特別支援の先生に聞いてみたところ、「うーん、この分野はまだ確立されているとは言えなくて、議論があるらしいのよね・・」という返事だった。(これはハイパーアキューシズ・セラピーのときにも同じ返事であったが、私はそれでもいいや、ということでやってみた。)

この「sensory integration training」の説明はこちらのページを参照。事例、コメントなど、歓迎いたします。また、上記で学校の先生に勧められて読んだ本は下記です。

The Out-of-Sync Child: Recognizing and Coping with Sensory Processing Disorder (The Out-of-Sync Child Series)

The Out-of-Sync Child: Recognizing and Coping with Sensory Processing Disorder (The Out-of-Sync Child Series)

*1:Individualized Educational Plan、個別対策の必要な子供に対し、校長先生・担任・特別支援教師・スクールサイコロジスト・親などが皆で協議して、特別支援の具体的な中味を決定する仕組み。対象生徒の決定や支援の中味については学区が認める必要があり、このミーティングの中味は書類化され出席者全員がサインして学区に提出し認可をもらう、アメリカで初めて見た「稟議書」である。

Voice4uが時事通信で取り上げられました

michikaifu2010-04-04


先日もご紹介した、自閉症向け会話iPhoneアプリ、Voice4Uが、時事通信の記事に取り上げられました。

http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2010040400178

Voice4uはiPadでも使えます。iPhoneでは、まだまだ画面が小さく、小さい子供などだとアイコンを選ぶ操作がやりづらい場合がありますが、iPadならばもっと簡単です。より幅広い方にご利用いただけるようになります。(写真はモックアップです)

また、Androidにも対応できるよう、現在開発中です。Androidならばドコモなどより多くのキャリアから出ていますので、携帯端末向けでも、より幅広い端末に対応できるようになります。

自閉症に関わる方々が身近におられれば、ぜひご紹介ください!

http://voice4uaac.com/jp/

 4月2日は「世界自閉症啓発デー」です

英語エントリー→ http://hogacentral.blogs.com/japan_tech_blog/2010/04/april-2---today-is-world-autism-awareness-day.html

日本ではもう3日になってしまいましたが、当地では今日4月2日が、国連の定めた「世界自閉症啓発デー」です。少しのお時間がもしあれば、下記のサイトで自閉症のことを少し理解してください。

世界自閉症啓発デー公式サイト - トップページ

Facebookのアカウントをお持ちでしたら、「啓発デー」ページのファンになることで、サポートを表明することもできます。

World Autism Awareness Day - ホーム | Facebook

すでに何度かこのブログでも取り上げましたが、私は友人(自閉症児のお母さん)が提供する、自閉症の方のためのiPhoneアプリ、「Voice4U」を応援しています。お話の苦手な自閉症の方でも、楽しく周囲の方と会話できる、グラフィック・アイコン・アプリです。自分の好きな人やものの写真をとって、自分だけのアイコンを作ることも簡単にできます。軽くて持ち運びの便利なiPhone/iPodTouchを使って、かわいい絵のアイコンでお話するのは、カッコいいことを気にするティーンにも人気です。

Voice4Uは、英語と日本語の両方があり、日米のiTunesStoreにて販売しています。詳細は下記をご覧ください。

http://voice4uaac.com/jp/

自閉症向けiPhoneアプリ「Voice4u」がWSJに載りました


以前、このブログでもアンケートのご協力をお願いした、自閉症向けiPhoneアプリ、「Voice4u」は、11月に日米同時に発売され、12/28日付けのウォール・ストリート・ジャーナル「App Watch」欄に記事が掲載されました。

App Watch: Apps as Parenting Tools - Digits - WSJ
http://voice4uaac.com/jp/

お話するのが苦手な自閉症の方が、このアプリ上のシンプルなアイコンで物や気持ちを表現して、それを見せることで周囲の人とコミュニケーションができます。アイコンをクリックすると音声が出て、サーチもでき、よく使うアイコンが上位に来る設定タブもあり、また自分の好きなものを写真にとって新しいアイコンとすることもできます。

アメリカでは英語版、日本では日本語版が販売されています。

このアプリは、シリコンバレー在住の日本人おかあさんである久保由美さんが、自分の自閉症の息子のために、こんなのが欲しいと思い立って始めたものです。これに、当地の心優しい若い日本人エンジニアが複数協力して、プログラムを書いたり事業の立ち上げを行い、自閉症専門家の協力を得て、絵も音声も自閉症の人に合うように、細かいところまで気を使っています。

たくさん売れる種類のアプリではないので少々値段は高め($30)ですが、同じことのできる代替手段(専用端末など)に比べて格安で、保険申請などの心配をしなくても買えるレベルです。現在、あちこちの自閉症関連団体などにご案内していますが、どこでも大変好評です。また、自閉症だけでなく、聴覚障害のある方などでもお使いいただけると思います。

このアプリがお役にたちそうな方をご存知でしたら、ぜひ紹介してあげてください。宜しくお願いいたします。

<追記>
Voice4uのTwitterアカウントはこちらです
http://twitter.com/sv4u

自閉症の人を支援するiPhoneソフト アンケートに協力してください

私の友人で、シリコンバレー在住の日本人おかあさん、久保由美さんが、現在iPhone/iPod Touchで使えるアプリを作って発売しようと頑張ってます。

由美さんの息子さんは自閉症です。お話がうまくできない息子さんは、これまで絵カードを使って周囲に意思や感情を伝えていますが、iPhone/iPod Touchなら、持ち運びが簡単で、録音音声も使えて便利です。アプリ作成には、シリコンバレーの心優しい若きギークたちが協力しています。日本語でお使いいただけます。

発売を前に、潜在ユーザーの声を聞きたいとうことで、ウェブサイトでアンケートを実施しています。自閉症のご家族をお持ちの方、自閉症とかかわりのある教育者、友人、近所の方など、関係者の方にアンケートにご協力をいただきたく、お願いいたします。

アンケートのお願いです - 自閉症 渡の宝箱

上記、コピペ大歓迎ですので、多くの方にお伝えください。