メルマガ2・3号のおしらせ

先週は多忙にて、メルマガ発行のお知らせをしませんでしたが、先週月曜日に第二号を出しました。そして、本日第三号が出ましたのでお知らせします。

2012/11/26 第二号 ◆「ガンナム・スタイル」のPSYの考察 ◆【連載】育てにくい子供たち(その2)〜 予習の効果
2012/12/3 第三号 ◆お台場ゴーストタウン ◆【連載】育てにくい子供たち(その3)〜 「聴覚過敏」の話

お申込みはこちらから→
海部美知のTech Mom from Silicon Valley 生活編

自閉症のもっと詳しい話を読みたい方は、久保由美さんのメルマガをどうぞ→
久保由美のシリコンバレーで自閉症児を育てる

メルマガはじめます

ディナーショー・ツアー(=有料メルマガ)「Tech Mom from Silicon Valley 生活編」を始めることにいたしました。来週、「まぐまぐ」から創刊号を出します。一ヶ月3回発行の予定です。

メルマガを始めるに至った経緯は、下記の「サンプル」および創刊号冒頭のご挨拶にあるとおりです。

お申込みは下記からどうぞ!!

海部美知のTech Mom from Silicon Valley 生活編

下記にあるように、「発達障害学習障害」についての媒体を作ろうと思ったのが発端であり、その流れで、自閉症に詳しく、自閉症の方向けのiPhoneアプリを作っている、起業家の久保由美さんも巻き込み、同時にメルマガを発刊する運びとなりました。久保さんは重度の自閉症、私は健常とのボーダーラインの「育てにくい子」が基本的なテーマで、ときどき共同記事などの企画も考えています。

久保由美のシリコンバレーで自閉症児を育てる

創刊号の冒頭記事を書いていて、そういえば昔はこんな「雑感」的なことも、気軽にブログに書いていたなぁ・・などと、ちょっと感慨にふけってしまいました。最近はどうも、ブログに書く前に「本当にこれ書いていいのか?」「その影響は?誰それがこれ読んだらどう思うか?仕事に影響あるかないか?」などと、ぐるぐる考え、書くときは「よし、やるぞ!」などと覚悟が必要で、結局気力が続かず書かない、ということがひじょうに多いので、まぁ本当に、そういう世の中であります。

心の中では、とりあえず半年ぐらい、頑張ってみようと思います。ご質問も受け付けます。どうぞ宜しくお願いいたします。

<ご挨拶>
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皆様、こんにちは。「シリコンバレーのテック母さん」こと、海部です。
このたび、メルマガを始めることにしました。

最近ブログの更新も滞りがちな中、メルマガを始めようと思ったのは、「発達
障害・学習障害」の情報発信をやろうと思い立ったことがきっかけです。私は
この分野の専門家でもなんでもありませんが、二人の息子がそれぞれに問題を
抱えて、そのために右往左往してきた体験談を、他の親御さんの参考にと思っ
てブログに書いています。なんとか定期的に、届けるべき読者に届ける仕組み
がないものか、とずっと考えていたところ、ちょうどシアトルでまぐまぐのお
手伝いをされている、友人の佐川さんからお声をかけていただきました。

当初はその分野に絞ったメルマガにしようと思ったのですが、まぐまぐの皆様
と議論する中で、実は一般的な子育ての話に通じるところがありそうだし、ま
た女性の家庭での役割などについてのエントリーを読みたがっている人も多そ
う、という感触もあったので、間口を広げて「生活編」とすることにしました。
教育・家庭の話が中心ですが、本業のIT・通信や経営の話も、ブログではいろ
いろ気を使わなければいけないためにめんどくさくなっているようなモノを書
くかもしれません。

こうして考えてみると、昨年末に日経ビジネスオンラインに書いた、「ネット
はオープンからクローズドへ」という流れに私も加担している感じがします。
(^^ゞ

なにしろ、中身も分量もあまり厳しくキメキメにせず、まずは緩めに始めてみ
たいと思いますので、どうぞ宜しくお願いします。

<続き>
海部美知のTech Mom from Silicon Valley 生活編

自閉症の方のためのアプリ、Voice4Uにご協力を!

以前から時々このブログでご紹介している、自閉症など会話の不自由な方のための絵カード型アプリ「Voice4U」の中の人達が、現在、中小企業支援プログラムに応募中です。


https://www.missionsmallbusiness.com

このプログラムは、ChaseとLivingSocialが主催、米国で創業2年以上の中小企業に対し、支援金を出すというものです。Voice4Uは、すでにiPhoneAndroid向けにアプリを提供しており、このアプリでは、従来のような最初から提供されている絵のセットだけでなく、ユーザー自身や周囲の人が、好きなものの写真を撮って音声を録音することで、カスタマイズすることができるのが特徴です。このカスタマイズ・カードをバックアップするシステムを現在構築中で、そのための資金としてこの支援金に応募しています。

第一歩として、一次審査を通過するために、まず250以上の投票が必要です。現在、あと少しで到達しそうなところまで来ていますので、是非、投票にご協力をお願いいたします。

(1) https://www.missionsmallbusiness.com/ へアクセス
(2) 画面右下の "LOG IN & SUPPORT" をクリックし、Facebookアカウントでログインします。
(3) "business name" に Voice4u と入力して “SEARCH” をクリックします。
(4) "VOTE" をクリックしてください。

なお、私は中の人たちの友人であり、自分としても発達障害に関わりがあるため、会社創設以前からずっとサポートしてきています。このアプリは、昨年の日経BP主催のAndroidアプリ大賞を受賞しています。

Voice4uがAndroid Application Award大賞を受賞した折のビデオ | Voice4u VOCA アプリ

シリコンバレーの日本人起業家たちが作り、世界で利用されているこのアプリを、是非ご支援ください!

<追記 22:30>
さきほどブログにてお願いしたばかりですが、なんともう250を超えたそうです!皆様、本当にご協力ありがとうございました!!

大阪維新の会 トンデモ条例案の黒幕

今朝から、わがツイッターのタイムラインがこの条例案なるものへのすごい批判の嵐でいっぱいになっている。大阪維新の会自体についてはあまり知見がなく、政治的な評価などの意見は私は全くもっていないが、この条例案祭りが、ツイッター以外の場所にあまり出ていないようなので、少々ツイッターを深読みしてみた。

条例案は下記参照。あまり長くないので、ご興味のある方はまずは見てほしい。「これって虚構新聞でしょ」というツイートが的を射ている。本気でこんなことを公の場で言う人がいるのかと驚いた。ツッコミどころが多すぎる。
大阪市・家庭教育支援条例 (案) ――― 全条文 (前文、1〜23条)

特に私の周囲で批判が多いのが、第4章第15条。

乳幼児期の愛着形成の不足が軽度発達障害またはそれに似た症状を誘発する大きな要因であると指摘され、また、それが虐待、非行、不登校、引きこもり等に深く関与していることに鑑み、その予防・防止をはかる

いまどき、こんな話を信じる人がいるのだろうか?確かに、極端な虐待などの環境で育った子供は発達障害のような行動をするかもしれないし、また「普通の子とのボーダー」のような軽度発達障害の子へのケアが現在の日本では抜け落ちていて、親が過剰ストレスから育児放棄のような状態になったり、きちんとしたケアがされなかったために二次障害として引きこもりなどになったり、といったケースはたぶん多くあるのだろうと思う。それにしても、この言い方は「親の育て方が悪いから発達障害になる」と言わんばかりで、「予防」ができるとはこれいかに??

さらに18条がこれだ。

わが国の伝統的子育てによって発達障害は予防、防止できるものであり、こうした子育ての知恵を学習する機会を親およびこれから親になる人に提供する

「ゲイは後天的で治せる」というアメリカの超保守共和党かよ、というツイートがこれまた当たっている。

それにしても、あまりに無茶苦茶なので、逆に一体どういう人が何の意図でこんないかにも批判を浴びそうなものを持ちだしてきたのか、もしかして「炎上マーケティング」の一種なのでは?などと疑ってしまう。

この条例の背景などに関する報道はあまり見当たらないのだが、このトゥギャッターを読んでいくうちに、少々気になる手がかりが見つかった。
大阪維新の会: “家庭教育支援条例案”が、驚愕以前にツッコミどころ満載…な件 - Togetter

私はたまたま、発達障害には個人的にも関わりが深く、まずこれに反応したのだが、これだけでなく条例全体で使われている用語やトーンが、トゥギャッターの中で指摘されている「高橋史朗」なる人のトーンに確かに共通する。「発達障害は予防、改善できる」とか、「伝統的子育て」とか、まさにぴったり。

高橋史朗 - Wikipedia
http://www.amazon.co.jp/%E8%84%B3%E7%A7%91%E5%AD%A6%E3%81%8B%E3%82%89%E8%A6%8B%E3%81%9F%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%AE%E4%BC%9D%E7%B5%B1%E7%9A%84%E5%AD%90%E8%82%B2%E3%81%A6%E2%80%95%E7%99%BA%E9%81%94%E9%9A%9C%E5%AE%B3%E3%81%AF%E4%BA%88%E9%98%B2%E3%80%81%E6%94%B9%E5%96%84%E3%81%A7%E3%81%8D%E3%82%8B-%E7%94%9F%E6%B6%AF%E5%AD%A6%E7%BF%92%E3%83%96%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%AC%E3%83%83%E3%83%88-%E9%AB%98%E6%A9%8B-%E5%8F%B2%E6%9C%97/dp/4896391942

さらに、第5章第21条のこの用語。

親としての学び、親になるための学びを支援、指導する「親学アドバイザー」など、民間有資格者等の育成を支援する

この「親学アドバイザー」というのは、この高橋史朗氏のやっている「親学推進協会」というところで出している資格だそうで、講義料や資格取得にお金を払うという商売。
親学アドバイザー認定講座:親学推進協会-親が変われば、子どもも変わる-

さらに、「大阪市」の話のはずなのに、序文には下記のように「本県」とあるため、どこかのコピペだろうというのがツイッター論壇のもっぱらの推測だが、確かに高橋史朗氏は前埼玉県教育委員会委員長であり、埼玉県と関わりが深いようだ。

 このような時代背景にあって、本県の未来を託す子供たちの健やかな成長のために、私たち親自身の成長を期して、本条例を定めるものである。

そして、これもトゥギャッター情報からすると、高橋史朗氏が大阪維新の会で講演をやったこともあるらしい。

以上、少し調べただけなのでもちろんこれが真実とは言い切れないが、ツイッター論壇から見たトンデモ条例案の黒幕推理である。それにしても、だからといって何がどうなって、こんな見るからに炎上ネタが、これだけ今微妙な立ち位置にある維新の会の発言に登場したのか、私には全く理解できない。どなたか、解説してほしい。

一応付け加えておくと、日本でも発達障害の支援体制はだいぶ整ってきているが、「医療」「療育」の範囲に届かない、軽度・ボーダーラインのケースについてはまだまだ手薄で、教育現場も親も、個人が背負いこんで頑張るしかない状況であると聞いている。上記に書いたように、それが原因で親や教師が燃え尽きたり、本人がいじめにあったり自信をなくして引きこもったり荒れたりすることもある。アメリカの中でも対策が手厚い学区で、しっかりサポートしてもらっている私ですら、しばしば燃え尽きそうになるので、支援も周囲の理解も得られない親御さんがどれほど大変な思いをしているか、想像を絶する。だから、「軽度」に対する支援体制の強化、という言葉ヅラだけとればどんどんやってもらいたいと思う。ただ、この条例の中身では困る。

もう一つ、ご参考に、この条例案に対する反論ブログを掲げておく。

大阪市「育て方が悪いから発達障害になる」条例案について - 泣きやむまで 泣くといい

<追記1>
コメント欄にいただいたように、安倍元総理などもからんでいるとのことです。
http://hakubun.jp/2012/04/%E3%80%8C%E8%A6%AA%E5%AD%A6%E3%80%8D%E6%8E%A8%E9%80%B2%E8%AD%B0%E5%93%A1%E9%80%A3%E7%9B%9F%E3%81%AE%E8%A8%AD%E7%AB%8B%E7%B7%8F%E4%BC%9A/

<追記2>
橋下徹氏は、自身で弁明ツイートを出しています。
Twitter. It's what's happening.
http://www.47news.jp/CN/201205/CN2012050401001415.html

<追記3>
「親学」推進派に関する追加情報を盛り込んだブログです。これで、私にはこの件の構造が理解できました。「利益誘導」も絡むかもしれないけれど、結局アメリカの「ティーパーティー」さんたちと同じような思考回路の有力者+有権者がかなり存在する、ということらしいです。このブログのコメント欄にもその片鱗が見られますね・・
「俺の邪悪なメモ」跡地

あと、こちらもご参照。
大阪維新の会のエセ科学的「家庭教育支援条例(案)」逐条批判 (1/3)

<追記4>
参照ループになってしまいますが、やまもといちろうどののエントリーもご参考に。
大阪維新の会の新条例が面白すぎて笑える: やまもといちろうBLOG(ブログ)

<追記5>
もうさすがにこの記事を読みに来る人はあまりいないと思いますが、自分のメモとしてさらに関連リンクを追加しておきます。「大批判を浴びている発達障害の部分を削除するという『譲歩』をすると、なんとなく受け入れられてしまう、それをあらかじめ狙って壮大なトンデモ案をわざと最初に持ってきた、という戦術では」という指摘は面白いです。
カイパパ通信blog☆自閉症スペクタクル : 大阪維新の会「家庭教育支援条例(案)」に反対します
http://d.hatena.ne.jp/bem21st/20120505/p1

発達障害のサイエンス

このところ、たまたま立て続けにこのあたりの話を人としたので、ちょっと我が家の息子のセラピー状況をまとめておくことにする。

これまでの経緯は下記のカテゴリー参照。我が家は二人の息子(現在上は高校生、下は小学生)が両方とも、それぞれ問題を抱えていた。長男は症状としてはディスレクシア的だったが、ビジョンセラピーで乗り越えている。そのあたり、経過は下記を参照されたし。
[発達障害] - Tech Mom from Silicon Valley
[学習障害] - Tech Mom from Silicon Valley
[視覚発達障害] - Tech Mom from Silicon Valley

次男は、広汎性発達障害と一応診断されているが、ADD的なところもsensory processing disorder(感覚処理障害?日本語の正式名称は知りません)的なところも混ざっている。最初に手をつけたのは「聴覚処理障害」の一部で「ハイパーアキューシズ」と呼ばれるもの。そのあたりはこれまた過去の経緯参照。
[聴覚発達障害] - Tech Mom from Silicon Valley

その後、聴覚以外の部分での問題がどうしても解決されず、病院では診断以外の何もできず、結局近くのクリニックで「EEGセラピー」というのを実施。(これは医療行為でなく、「教育」とカテゴライズされる。)脳波を測定しながらパソコンでアニメ映画を見て、脳波がある程度の範囲を超えて上下すると、アニメ映画が止まってしまう、という仕組み。脳波が極端に低下(ボーっとする)や上昇(コーフンする)すると視覚化されて、自分で深呼吸をするなど、意識して脳波の働きを通常レベルに戻す。

前回の記事に書いたような「脳のアイドリング・レベルを上げる」という全体的なものに加え、特に弱い部分をターゲットにする。最初の検査で、彼の場合は脳のうち、後頭部の右側(人とのコミュニケーションを司る部分、ここが弱いとアスペルガー症状が出る)と、真ん中の部分(感覚を受容する左脳=I/Oと、それを処理して行動の司令を出す右脳=CPUを結ぶ通信回線、ここが弱いと感覚処理障害となる)の働きが特に弱いことがわかっていたので、この部分を読めるところに計測ノード(というのでしょうか??)を貼りつけて、トレーニングを行う。徐々に効果が出てきたかな、と感じ始めたのは10月頃。セラピー開始後約1年弱。

脳波トレーニングの効果がようやく出てきたみたい - Tech Mom from Silicon Valley

その後、PACEという集中力トレーニングを続けている。こちらは、短期メモリー、集中力の維持、音と字の結びつき、といった部分を、レベルを徐々にクリアしていくゲーム的に仕立てたトレーニング。いろいろなものがあるのだが、例えば上下左右に向いた矢印がランダムに並んでいる表を「右、左、上・・」などと順番に読んでいく、などというのは、以前長男がビジョンセラピーでやったものと似ている。目的が違うのでやり方が少し違うが、共通の要素があるようだ。

次男は、この矢印のものや、縦に並んだ一桁の数字に「2」を足した答を次々と読み上げていく、といったものが超苦手で最初のうちは苦労していたが、3ヶ月ほどやってきて、だいぶ慣れてきた。(余談だが、なぜか暗算の足し算・引き算が非常に苦手で、未だに指折り数えないとできない。一方、掛け算は日本語で九九を覚えたのだが、詩のように語呂の良いものを暗記するのは得意なので、掛け算・割り算はクラスでもトップクラス。この訓練で足し算の暗算もできるようになったら嬉しいと期待中。)

行動面では、秋の先生との面談のときには、だいぶよくなってきたものの、未だに集中ができないことが多く、できていないことを指摘されるとフラストレーションから「死んだほうがまし」といったネガティブなことを言うことに先生方は懸念を示して、サイコロジストを紹介されたりした。家ではそんなことはないので、あれは演技だと私は思っているのだが・・

まぁでも、ほんの少しでも進歩があると、急に光が差したような気がするのが母親というもので、今日も今週末締め切りのプロジェクトのための文章を少し書かせたのだが、自分で時間を決めて、携帯電話でアラームをセットし、その時間になったら作業を始め、ちゃんとしたフル・センテンスで自分の考えを書き下し、スペルもかなりできた。(スペルチェッカー使用、ほんの5行ですが・・(^^ゞ)書き終わったら、友達に電話していい、というインセンティブがあったというものの、それだけでも今日の私はなんだか気分がよい。

相変わらず、果たしてセラピーの成果なのか、単に成長しただけなのか、はっきりと判断がつくわけではないが、発達障害学習障害の「脳のはたらき」というサイエンスとしての分析と、それをもとにした対策という分野は、引き続きとても興味深い。

@kuboyumi さんの話によると、例えば自閉症の人の就業支援体制といったものは、実はアメリカより日本のほうが優しいといった事情もあるようで、何でもアメリカのほうが良いということではないらしい。こうした「社会面」でのサポートも引き続き必要なのだが、発達障害の人を「仕組みのほうをやりくりして受け入れる」のと並び、「サイエンスやIT技術を活用して、現在の仕組みの中でもなんとか機能できるようにする」というのも必要。「スポーツのトレーニング」と似たような感覚で、アスペルガーADHDの人が自力で普通に、既存の教育や職業のシステムに適合し、彼らの抜群の集中力やクリエイティビティを発揮できるようになれば、本人たちも幸せだし、また社会のイノベーションもますます進んでいくはずだと思っている。

脳波トレーニングの効果がようやく出てきたみたい

またしばらくご無沙汰していたが、我が家の次男T(10歳)の「EEGセラピー」の効果がようやく出てきたようなので、レポートしてみる。とある友人からご自身のお子さんに関して相談を受けており、彼女の参考になるようにかなり詳しく書くので、長くなるがご容赦願いたい。

これまでの経緯は下記を参照してほしい。
「sensory processing disorder」(感覚処理障害?)のお話 - Tech Mom from Silicon Valley
ADDを「瞑想」で治すトレーニング、というワケか! - Tech Mom from Silicon Valley
聴覚セラピー開始、「マイアヒ」で果たして学習障害が治るか!? - Tech Mom from Silicon Valley
オーディオ・セラピー AIT終了後の経過 - Tech Mom from Silicon Valley
聴覚問題その後の経過と「書く」ことの苦しさ - Tech Mom from Silicon Valley

Tは、ADDとアスペルガーと聴覚処理障害が少しずつ混じっているような感じで、一応病院では「広汎性発達障害(PDD-NOS)」と診断を受けているが、「なんだかよくわかんないけど、一応自閉症スペクトラムの傾向は見られるね」というぐらいで、療育も今まで学校でやっているのを続ければいいと言われただけという、ボーダーラインのケースである。

ちょっと見たところだたの落ち着きのない子供で、一対一で勉強を見てやればできるのだが、学校の教室のように他の子供がいるところでは全く機能できない。先生の指示が理解できず、ぼーっとしているだけでタスクに全くとりかかれない。以前のように、机の下に隠れたり床にごろごろ転がったりする異常行動はもうないけれど、授業についていけないので、引き続き、授業時間の半分ほどの間、特別教室のお世話になっている。家でも、自分が好きなゲームやレゴなら何時間でも集中できるが、そうでない日常の行動、例えば歯を磨くとか着替えるとか、もちろん宿題も、特に好きでないがやらねばならないことを自分から進んでやることができず、いちいち私が言わないとできない。時間の感覚がなく、「何時になったら何をしろ」という指示がまったく守れない。文句を言えば「ちゃんとやった」とウソをつく。でも確認するとやっぱりできていない。できるまで何度でもガミガミ言わないとダメ。疲れる。はぁー・・明らかにADDというわけでもないし、明らかに自閉症というわけでもないし、明らかにディスレクシアというわけでもないし、なんだかわからないが、明らかに他の子と違うし、担任の先生は扱いに苦労する。友達づきあいでも、突然KYな行動をとって嫌われることがある。そんな子である。

EEGについては上記過去エントリーを参照。大雑把に言えば、「瞑想」のように、脳の働きを意識的に安定させる訓練で、「脳波トレーニング」とでもいうようなものだ。

我が家が通っているクリニックは下記のとおり。
Bay Area - California Learning Disorder Drug Free Treatment | Mind Builders - Attention and Achievement Center

週三回クリニックに通うのは、車で送り迎えする親にとっては大変だが、本人は1時間、アニメ映画を見ていればいいだけなので、本人はけっこう楽しんで通っていた。だいたい1年ぐらいやるのかな、と思っていたのだが、やり始めても何も普段の態度に変化がなく、親は「本当に意味あるのかなぁ?高いお金払っているのに騙されてるんじゃ?」などと疑心暗鬼になってしまった時期もあった。

特に夏休みの初め頃、テニスのキャンプに参加させたところ、インストラクターの指示をあまりに聞かないために「もう来ないでください」と言われたときは本当にショックだった。これまで、指示に従えないときは、部屋の隅でぼーっと座っていたりなど「黙ってふさぎこむ」感じだったのに、今回は先生に対して攻撃的に言い返したのだ。その直前に、夏休みの間に勉強を少しでも追いついておこうと、上の子が通う塾に行かせようとして相談したら、レベルを見るためのテストを受けた段階で「指示に従えずタスクにとりかかれないので、ウチでは見られません」と断られてしまった後のダブルパンチだった。それで、セラピーの医師にも相談したりしたが、脳波のテストをすると進歩が見られるので、もうちょっと頑張れと言われるばかり。

悩みつつ、「言い返す」というのはもしかしたら、脳の働きが変化している過渡期なのかも、とも思った。それまで、彼との対話はほとんど、私が質問したら彼がポツンと答えるのみで終わり、たまに彼のほうから出る話は、彼の頭の中にあるファンタジーの世界(スターウォーズやゲームのことなど)が脈絡なく出てくるばかりで、リアルの世界に関する言葉のキャッチボールがほとんどできなかった。なので、「言い返す」というのは、ちょっとずれているけど対話がかみあってきたという意味かもしれないし、そういえば私との対話も少し変わったような気がする。何がどう、ときちんと説明できないが、長年のつきあいのある母親には感じられる微妙な変化だった。それで、夏休みの間は淡々とそれまでどおりセラピーを続けていた。(聴覚セラピーについてはかなり前にすでに終了済み。)

それが、夏の終わりから秋の学年の初めにかけ、少々変化があらわれた。

カリフォルニア州では、学年の終わり近くにあたる5月に、州統一の標準テストがあり、その結果は新学年開始直前ぐらいに自宅に郵送されてくる。そのテストの結果が、驚くほど「よかった」のだ。前年は、通常と同じテストを受けたところ、英語(=国語)も算数も、5段階の最低レベルでほとんど何もできていない状態だったので、それに私がショックを受けてスクランブルし、EEGセラピーを始めたという経緯があった。今年はそういうわけで学校と相談し、「簡易版」のテストを受けさせてもらった。「簡易版(modified)」とは、テストの内容は通常どおりだが、分量をかなり減らしてあるバージョンだそうだ。で、今回の結果は両方の科目とも「最高」レベルだった。項目ごとの内訳を見ても、引き続き「書く」ことは苦手なのだが、他はどれも上々の位置につけていた。

これには本人も親も驚いた。信じられなかったので、本当に内容は学年標準どおりなのか、と再度先生にも確認したが「そうだ」と言われた。要するに、前年はあまりに分量が多くて「あー、もうダメだ、できない」と思ってシャットダウンしてしまったのが、「できそうだ」と思えばスイッチがはいるということらしい。

そう、スイッチがはいるか、はいらないか、が彼の場合ポイントなのだ。脳波トレーニングの主眼は、「アイドリング状態の脳波レベルを高める」ということだった。(脳波を計測する部位を特に働きの弱い脳の部分に設置し、ピンポイントで訓練する。)普通、人の脳は、何もやっていないときでも、ある程度の「アイドリング状態」で動いており、何かをするために集中するときはそれが高まるわけだが、彼の場合はその「アイドリング」の回転数が異常に低いため、タスクを行うための回転数まで上げる(=スイッチがはいる)ために、普通の人よりも何倍もエネルギーがいる。自分の好きなことならすぐにそれができるが、好きでないことにとりかかることができないのはこのためだそうだ。*1

上述の「簡易版テスト」の場合は、「タスクに要する回転数のレベルを下げてくれた」ということになる。だからうまくスイッチがはいったわけだ。

その直後に、クリニックで脳波の計測をしたところ、アイドリングが「通常レベル」まで上がったとの結果が出た。医師からは、もうEEGを続ける必要はなく、今度は集中力を高めるための「PACE」(Processing And Cognitive Enhancement)というトレーニングに移行するように、と言われた。

PaceLearningSkills | An opportunity to start a tutoring business and to help others succeed

詳しい内容は上記を見て欲しいのだが、リストされている矢印の方向や数字などを読んだり、リストの中から特定の文字に◯をつけたり、カードを使ったゲームなど、だんだんにレベルアップしながら集中を持続させる訓練だ。以前やった、長男のビジョンセラピーにも似たようなものが多く含まれており、これはなんとなく感じがわかったし、効果もほぼ予想でき、現在やり始めているところだ。

学校の授業中は、相変わらず関係ない本を引っ張り出して読んだりする問題があるようだが、家での行動については少々変化が見られる。いつもではないが、自分から宿題にとりかかったり、歯磨きなどをできる頻度が増えた。宿題も、今まではやり始めても5分おきに声をかけないと続けられなかったが、声かけの頻度がだいぶ下がった。特に難度の高い、「自分で文章を考えて書く」というのが、(上の子もそうだったが)手書きでなくパソコンで書けば、短いものなら、苦労しながらも自分で書き始めて書き終われるようになった。中身はもちろんメチャクチャなので、ついついダメ出しをしたくなってしまうのだが、私としては、まずはこうしてタスクを自分で遂行できるということを奨励したいので、規定の段落数さえ書けていればOKで、ゲームやっていいことにしている。

先週は、「秋祭りで出すブース・ゲームの提案書」というのを書いていた。義務ではなく、やりたい人だけやればいいのだが、友達と二人で週末家に集まり、アイディアを出しあいながら書いていた。木曜日には、先生が赤を入れてくれたものを書きなおしていた。すべて、私がやれと言わなくても、自分で楽しそうにやっていた。書き直しは、寝る直前になって翌日が締め切りだと自分で思い出し、頑張ってパソコンに向かってやり、今年度からウチの小学校で使い出した「ウェブ・ロッカー」(個人別クラウド・ストレージ)にアップしていた。その甲斐あって、提案書は採用になったらしい。

こうした一連の自発的な行動は、これまでの状況から見ると劇的な変化だ。もちろん、これはゲームという「好きなこと」をやっているのであり、友達と一緒だし、面白いから楽なのだが、それにしても最後までちゃんと続いて提出できていることが私には驚きである。

会話もだんだん噛みあうようになってきた。「speaking of which(そういえば)」というのが彼の最近のマイブームで、それまでの会話の流れに関係のある話題を出して来られるようになり、別の人同士が話している会話の流れに割り込むときも、ちゃんと関係のある話題ではいってこられる。今日学校であったこと、来週の予定などといった、リアルの話が自発的にできる。友達と電話で延々会話ができる。

果たしてこれが、セラピーの成果なのか、標準テストでよい成績をとって自信ができたためか、単に時間がたって成長しただけなのか、それはわからない。おそらくは、すべて少しずつ関係あるような気がするが。

まだまだ、忘れている宿題や課題もどこかに隠れていそうだし、おそらくはこの先もずっと集団行動は苦手なヤツになるだろうし、相変わらず大きな音はダメで映画館に行くときは耳栓持参だが、なんだか少し光明が見えてきた気がしている。とにかく、最低限のタスクをこなせて授業になんとかついていきさえすれば、少々成績が悪くても、人づきあいが苦手でも、行動がちょっとヘンでも、ここシリコンバレーは「アスペルガーの帝国」なので、何かしら仕事は見つかるだろうし、なんとかなると思っている。

*1:余談ながら、自分でもそういう状態になっているな、と思うことが時々ある。いろいろたてこみすぎて鬱っぽくなることがあり、そのときには家事や仕事をするために、普段の何倍も気力が必要と感じる。そういうときには、特に複雑な脳の働きを要する「料理」が一番先にできなくなる。

Voice4Uが日経BPアンドロイド・アプリ大賞受賞!

設立当初より、私も陰ながら応援している自閉症の方のためのアプリが、昨日日経BP主催のA3(Android Application Award)表彰式において大賞を受賞した。

http://www.sv4u.net/blog-jp/2011/04/voice4u-a3-first-prize/

このアプリは、自分の考えを言葉にして表現するのが苦手な自閉症の方が、絵を選ぶことで他の人とコミュニケーションするためのもの。言いたいことを絵のリストから選び、タッチすると音声も出る。現在のところ、日本語と英語に対応している。従来は、カードや専用の高価な機器が使われていたが、このアプリは大量のカードや重い専用機器を持ち歩かずに済み、選びかたも簡単で、安価なうえに自分で好きなものの写真を撮ってカードを作ることも簡単にできる。

設立者の久保由美さんは、ご自身も自閉症の子供のお母さんで、シリコンバレー在住の日本人仲間の一人。「こんなものがあったらいいな」と思うものを、多くの専門家や協力者の助言を取り入れ、仲間と一緒に作った。最初はiPhoneアプリから始め、Androidにも対応した。

久保さんは「お母さん」なので、単に「機能がどうの、値段がどうの」という視点だけでなく、こんな話もある。「ティーンや子供たちにとって、他の子たちと同じであること、クールであることはとても大切なこと。お話をしようとゴッツくてカッコ悪い専用機器を取り出したら、それだけで周りの子供たちはドン引きしてしまうけれど、iPhoneAndroidならば、サッとポケットから取り出しアプリを立ち上げると、『なになに?』とお友達が寄ってくる。そういう意味でも、コミュニケーションの助けになる。」

私自身も、子供がいろいろなセラピーのお世話になっていて、過去にブログにいくつか記事を書いている。(「発達障害」「視覚発達障害」「聴覚発達障害」のカテゴリー参照)その中で、「発達障害対策は、善意の持ち出しではなく、優秀な専門家がちゃんと儲かる仕組みになるべき」ということを書いている。このVoice4uも、アプリとしては比較的高額だが、継続的に儲かる商売になっていってほしいと思う。

「ビジョンセラピーは儲かる」でもいいんじゃないか - Tech Mom from Silicon Valley